モミ

学名 Abies firma
別名 モムノキ、サナギ
分類 マツ科モミ属 (常緑高木)
朝鮮半島にある同属のトウシラベの、朝鮮語名ムンビ(紋桧)が変化したとされる。他に、信仰の対象としての、オミノキ(臣の木)が転じたとする説がある。 原産・分布 本州(秋田県以南)、四国、九州 (日本特産種)
神奈川県 丘陵〜山地(〜ブナ帯下部)に広く分布する。尾根上部など急な斜面に多い。
用途 公園木、建築材、柩、塔婆
暖地を好み、日本海側に少ない。山地に普通の針葉樹。混交林を作り純林は少ない。ツガと混交することが多い。枝を水平に張り出し、若い間は円錐形、老齢で広卵状円錐形になる。
神奈川では、標高1000m以上のブナ帯になると、よく似たウラジロモミになる。
実生の成長は、初め陰樹で遅く、10年を過ぎると、陽樹となりきわめて早くなるため、短命と言われる。


群馬県
新治村
041011
モミ樹
樹皮は壮齢で灰色、老木で暗灰色、鱗片状に浅く割れて剥げる。
材は柔らかいため、柩などに用いられる。汚染大気に弱いとされる。


丹沢
唐沢峠
060129
モミ幹
葉は密生し、枝にらせん状に着く。葉柄は無く、葉の基部は細くなり丸い葉痕となる。若枝は淡黄緑色で、灰黒褐色の毛がある。
若木の葉の先端は、鋭く2裂し、触ると痛い。
よく似たウラジロモミの若枝は無毛で溝が目立つ。
枝・葉

秋山
赤鞍岳
150105
前年の枝の先に、1あるいは3つの芽が付き、春に新枝が伸びる。新芽の中には、1年分の葉が用意されている。 新芽

丹沢
宮が瀬
060409
モミ新芽
雌雄同株。雌雄異花。4〜5月に黄色い房状の雄花が前年枝につく。マツ科の雄花はどれも枝先に大量に咲いて花粉を飛ばす。 雄花

丹沢
七沢自然保全センター
130409
モミ雄花
樹冠上部の前年枝に緑色の雌花がつく。子房を包む苞鱗が鋭く尖り突き出ている。 雌花

丹沢
七沢自然保全センター
130409
モミ雌花
球果は大型の円柱形で、10〜15cmある。初めは緑色で、その年の10月ごろに熟すと灰褐緑色になる。
若い実は動物の食料になるようで、秋に青いモミの実がバラバラになって落果しているのをよく目にする。
★食★リス、ネズミ類
球果

群馬県
新治村
050904
モミ球果
熟すと、種子だけでなく、果鱗なども全て飛散するため、かじられたリンゴの芯のような果軸だけが残る。、写真の枝には、芯が突き出ている。 球果痕?

丹沢
唐沢峠
060129
モミ球果痕
写真左が種子(薄い翼があるがとれてしまっている)、右の翼が果鱗。果鱗の元(尖った部分)に2個の種子が付いたまま落下し、果鱗の滑空で種子散布されるようだ。
翼に対して種子が大きいので、せいぜい100mくらいしか飛ばないとされる。
果鱗・種子

丹沢
唐沢峠
080104
モミ種子
高さ20〜30mmほど。Tシャツを脱ぐような格好をしていて面白い。葉の先に種皮の袋がついている。子葉は無く胚乳の栄養でここまで育つ。 芽生え

上野原市
秋山
1605035
こぼれ話 「クリスマスツリー」
日本ではクリスマスツリーというとモミを思い浮かべる人が多い。ヨーロッパでクリスマスツリーとして使われる木は、一般的にはトウヒといわれる。ドイツトウヒの学名Picea abiesのabiesが、モミの属名Abiesと同じだったための誤りとされる。しかし、キリスト教圏ではモミを使っているところもあり、単に手に入りやすい針葉樹を使っているのかもしれない。また、キリストの磔刑の十字架がモミで作られていたためとする説も。
そもそもキリストの生誕祭であるクリスマスに、ツリーを飾る起源は聖書には無く、よく分からないようだ。記録に残る最初のクリスマスツリーは、15世紀のドイツでのこと。飾り物のとしては、キリストの降誕を知らせたベツレヘムの星や、アダムとイブの智恵の樹の実(リンゴ)などがある。
日本では、江戸末期にプロイセン公使が飾ったのが最初とされる。大正〜昭和初期には日本の年中行事になっていた。近年は、電飾の飾りだけが独立し、ツリーとは関係なく競って夜空を飾る風潮がある。写真は、丹沢宮ケ瀬湖の名物ジャンボクリスマスツリー。地植えの樹高20mのモミの木に飾りつけられている。

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