風散布

風まかせという最も原始的な種子散歩の方法。ここに分類される植物は、軽く小さな種子を大量に生産し、風に乗せて遠くに散布する。風に乗りやすくするため種子に翼や綿毛がついていることが多い。
厳密に見ると、果実そのものが風で飛ばされるものと、果実ではなく中の種子だけが風で飛ばされるものがある。前者は実による検索翼のある実の木」「翼・毛のある実の草」で分かる。後者の例としては以下に挙げる。
変わった風散布としてケヤキは葉付きの枝ごと風に飛ばされる散布をする。

種子が風散布される植物の例
マツ科(球果)
カバノキ科
オオバアサガラ
ケヤキ
サワグルミ
モミジバスズカケノキ


ヤナギ科の種子はどこに種子があるのか分からないほどの綿毛に包まれている。
写真はヤマネコヤナギの種子。
綿毛の中に細長い楕円形の種子が点在する。
秋田県鳥海山 10626


風散布の代表格、カエデ科の翼果。種子は若干細い側の先に付く。
写真はイタヤカエデ。翼は果皮が変化したもの。
翼果が木についている時は、2つがV字型に繫がった状態。
熟すと2つに別れ、回転しながら落下する。
V字型のまま落としても回転せずにポトンと落ちてしまう。


ケヤキの実は小さな痩果。
薄い果皮が種子を包んでいて、ほとんど果実=種子、翼は無い。
鳥の目を引く色も果肉も無いので、種子は風で散布するしかない。
実の豊作の年は紅葉する前、早期に葉が茶色く枯れることが多い気がする。
細い枝が折れ、枯れ葉と共に種子が散布される。

参考 種子散布のいろいろ

植物の種子は、一般的に親から離れたところで発芽するようなカラクリを持っている。そのようなカラクリを発達させた植物が、結果として生き残り繁殖してきたといえる。
親から離れることで親の下での病原菌や害虫から逃れ、様々な場所に散らばることでより生育に適した場所を探すことができる。個々の種子としては生きるか死ぬかだが、種としてみると多数の種子が散らばることで種の繁殖に繫がる。
種子が親から離れた場所に散らばることを種子散布といい、そのカラクリにより次のように分類されている。

◎風散布

◎動物散布(ひっつき虫型散布)
動物の体の毛にくっついて運ばれるタイプで、いわゆる「ひっつき虫」と呼ばれる。実による検索「ひっつき虫の草」を参照。

◎動物散布(被食型散布)
いわゆるフルーツは、果実が動物に食べられることで中の種子を散布する。種子は硬く消化されずに糞と一緒に排泄されるカラクリ。

◎動物散布(貯食型散布)
冬眠をせずに越冬する動物によって巣穴や森の中に蓄えられ、食べ残された種子が発芽する。実による検索「ドングリの木」を参照。

◎自力散布
果実が成熟すると風などの刺激で皮が大きく弾け、種子を飛ばすという機械的なカラクリ。