奥多摩鷹の巣谷&鷹の巣山

 

2003年5月13日(火)

日曜日に仕事をした代休で、平日が1日だけ休みになった。4年ぶりになるが、奥多摩の鷹の巣谷に行きたくなった。

沢登りのランクとしては1級で、多少のスリルを味わいながら気楽に登れるし、そのまま尾根まで上がって、登山道を使って鷹の巣山(1737m)の登山も楽しめる。それと、運が良ければ釣りも楽しめる。ただし、標高差が1200mほどあるので、のんびり釣りをしていると明るい内に下りて来れなくなる心配がある。

5時に家を出た。道路は、6時半を過ぎると車の量が増えてきた。それでも7時過ぎには、予定の日原部落に到着した。支度をしながら、時計を全く持っていないことに気がついた。のんびり釣りをしていると時間が分からなくなるので、釣りは沢の入口のポイントと、魚止め近くの2カ所だけで竿を出すことに決める。

日原川本流との出合いの鷹の巣谷は、暗い小さな流れである。谷に入ってすぐのゴルジュの横には、最近まで使われていたワサビ田がある。田に引き込む水の流れはまだ作られているので、またワサビが植えられるのかも知れない。このあたりで以前はヤマメがよく釣れたのだが、今日は留守のようだった。全く気配がない。少し登っていくうちに、その理由が分かった。河原の石の上に濡れた足跡がはっきり残っている。これは最近、と言うより数十分前に誰かが歩いた跡である。登るにつれだんだん跡が鮮明になってくる。

先行者がいた。フルフェイスのヘルメットを被ったまま釣りをしている。話しかけようとしたが、あたりの気配に全く無頓着で、こちらに気づかないので、そうっと後ろを通り過ぎることにした。ごめんなさい、お先に失礼、と心の中で言いながら先に行く。途中では釣りをしないつもりなので、逆に追いつかれることはないだろう。折角の平日の休みなのに、こんな谷で顔を合わすとは、お互いに運が悪かったのでしょう。

 

 

カエデの新芽                             まだ残っていた雪渓

鷹の巣谷には、途中、いくつかの小さな滝があり、ほとんど滝の右側(左岸)にルートがある。どれも慎重に登れば難しいものは無い。小さな谷なので、傾斜はきつく、ひたすら登ると2時間程度で大滝(2段30m)に着く。大滝も、滝の右横の岩場を登ることができる。一見怖そうだが、手がかり足掛かりは豊富にあるので、ロープが無くても登れる。ただし、高度はあるので下を見ると、少し怖い。

 

 

途中の滝                      大滝

この滝の前後でイワナが釣れる。本当は、大滝が魚止めなのだろうが、多分誰かが、滝下で釣れたイワナを、滝上に放流したのだろう。滝上を100mほど登ったあたりで当たりは無くなり、沢も2筋に分かれて釣りは不可能になる。いつも、この2俣で昼飯にする。今日は時計が無いので時刻が分からない。多分10時〜11時だろう。

 

 

谷の新緑(大滝上2俣)            源流の流れ

これから先は、源流の沢登になる。驚くことに、この大滝より上、沢の水が涸れる寸前の所にまで古いワサビ田がある。ワサビ田は岩を積み上げて水の流れをコントロールするので、小さなダムを作っているようなものだ。こんな源流部にまで人が入って、岩を一つづつ積み上げてワサビを作る労力に感心してしまう。

 

 

ワサビ田跡                           ワサビの葉と花

最後のワサビ田を過ぎて、沢の水も少なくなると、登りの傾斜は胸突き八丁になり、あえぎあえぎ登ることになる。沢の水は、あるところで突然、伏流となり流れの音が無くなった。初めの水流の直下でしばし休憩する。

 

 

岩から吹き出す清水              木の根

鷹の巣谷の最後は、どう登って行っても上に上に行けば登山道に出ると言われている。しかし、うまくルートを選ばないと最後のササ藪がひどくなる。僕も今までに何度か失敗して、大変な藪コギを強いられたことがある。右へ右へルートを取れば、鷹の巣山は近くなるが、ササの藪がひどくなる。本流?を選んで行くと右へ行き過ぎるようだ。久しぶりのせいか、結局今回も藪コギがひどくなった。悪戦苦闘、七転八倒、疲労困憊、右往左往、支離滅裂。ケモノ道を右に左に、少しでも上に、背丈以上のササに前進を遮られ、顔をつつかれながら尾根道を目指した。

 

 

ブナ林とササ藪                        ブナの大木

登山道のある尾根筋に近づくとササも丈が小さくなり、まばらになるのですぐに分かる。広い登山道のわきの草原に出ると、安堵のためにひっくり返って寝ころんでしまう。ここで少し休憩し、最後の坂を鷹の巣山を目指して登る。

鷹の巣山の山頂は、南の見通しが良くなっており、雲取山から高尾山へ連なる山々が広がっている。山頂への登り坂で登山者とすれ違ったきり、他には誰もいない。草原に座り、ビールを飲みながら持ってきた昼飯の残りを食べる。そして、しばし昼寝をする。

 

 

稜線の登山道と鷹の巣山                   奥多摩の新緑

帰りは、稲村尾根をどんどん下っていくと、朝の登り口にたどり着く。ブナ、イヌブナ、ムシカリ、ミズナラ、ダケカンバなどの樹木を観察しながら下りていく。稲村尾根の先端には稲村岩がある。稲村岩とは、高さが100m以上もある突き出た岩のかたまりのことである。日原部落からも正面に見える奇岩であるが、大きすぎて気がつかないかもしれない。登山道は稲村岩の手前まで来ると、鷹の巣谷とは反対側の巳の戸谷へ下りていく。

巳の戸谷の谷底は、切り立った稲村岩が南にあることと、夕刻のせいもあり薄暗くなっている。ここまで来ると、両足の膝が笑い、大腿筋が悲鳴をあげているのが分かる。2〜3日後にひどい筋肉痛になる予感がする。困った、休みは今日1日しかないと言うのに。

両足を引きずりながら車に戻り、支度をして、5時には家に向かった。

 

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