早春の丹沢山

 

2004年3月16日

 

春先で植木屋の仕事が暇になったので、日帰りで丹沢山に登った。宮ケ瀬湖から県道秦野清川線を塩水橋まで行き、丹沢山との間を往復する。単に登って降りるだけなら、往復で6時間かからないのだが、途中で樹木の冬芽や樹皮の観察をしながらになると、昼飯の休憩を入れて7時間をみていた。

空模様は春霞で煙っていて眺めは悪そうだが、暖かく安定していそうだった。

秦野清川線は工事で通交規制をしており、塩水橋までしか通れないらしい。塩水橋を過ぎた路側の空き地に車を止め、靴を履き替え林道を歩き始める。塩水林道はさかんに工事をしていた。清川建設という地元の建設業者の車が止まっている横を歩いていく。じきに暑くなりジャンパーを脱いで歩く。

山は、まだモノトーンの冬色だが、渓流沿いにはちょうど咲き始めたフサザクラが、よくみると暗く赤い色合いを連ねている。山の樹は、それぞれの得意な時期があり、その季節になると自己主張を始め、目立ってくる。それ以外の季節では多くの脇役達と一緒になって、自然の要素の一つになって埋もれてしまう。フサザクラも、他の季節では決して目立つことがない。同じように、ダンコウバイの花が所々で鮮やかに咲いていた。またハンノキやヤシャブシも、今年の花穂と昨年の実殻とが、枝先を賑やかにさせていて結構目立つ。

 

フサザクラの花                              ダンコウバイの花

 

渓流沿いの林道を離れて、人工林の中の登山道になった。スギ、ヒノキ林を過ぎるとカヤ、モミ、ツガの木が多くなる。目通り4〜5mはありそうなカヤの木がニョキニョキと立つ広い尾根筋を歩く。ニホンジカが、意外と近くを鳴きながら通り過ぎていった。4〜5頭の群れが20mくらい前方を横切ったりする。冬の丹沢では、猟区を追われたシカが尾根筋に集中し、過密になると言われる。そう言えば登山道の周りも、ササなどが全くない開けた広場になっている。

 

カヤの巨木                    尾根筋のブナ林

 

標高が800〜900を超えるとブナが多くなり、見通しがさらに良くなる。近くでキツツキのドラミングが聞こえた。前方の梢をじっと見るが分からない。急いでザックから双眼鏡を出す。音のする方角に少し歩く。すると小さな影が枝を移るのが見えた。双眼鏡を目にして探すが、すぐに視野に入らず焦る。再び肉眼で見ながら少し移動すると、今度は別な木に移動するのが見えた。やっと双眼鏡でとらえることができた。目の周りが白く、背中に白い紋、腹が赤、残念ながら頭の中に識別情報がない。帰って調べるとアカゲラの特徴に近いことが分かった。アカゲラは枯れ木を好む。良く見るとブナの立ち枯れが多い。

山頂近くまでブナ林の乾いた草原が続いていた。表土流出防止のため以前の登山道にネットを貼り、木道や木の階段で新しい登山道が作られていた。山頂付近には、シカの食害から下層植生を守るためのフェンスがあちこちに張られていた。今、丹沢の自然環境の保全活動が、県と民間ボランティアとの共同で進められている。この丹沢山も活動の対象地域のようだ。

 

下層植生保護のための木道                       丹沢山山頂

 

山頂の西側は風が強くて寒く、風を避けて昼食にする。山頂で3人の登山者に会った。一人の若者は、昨日に蓑毛から登り始め三ノ塔で一泊し、今日は蛭ヶ岳に向かう途中の非難小屋に一泊、明日大倉尾根を降りる予定だと言う。三ノ塔では、近くに避難小屋があるのに気がつかず、テントにシェラフ無しで寝たので、メチャ寒かったとそうだ。そりゃ当然だ。避難小屋だってまだ寒いと思うが、ほんとに若者は強いね。しかしこの時期、避難小屋を辿って丹沢の峯を歩くのも、静かで良さそうな気がした。

帰りは冬芽の観察をしながら塩水橋まで下っていく。塩水川の林道に出たところで、倒木の束の上でミソサザイを見つけた。尻尾を立てて、餌を探すのに忙しそうだった。

 

 

山と釣りの日々Top