花の命は短くて - 夏の花・冬の花

2006年9月19日

9月は初秋、秋の始まりだ。
残暑厳しいの予報を裏切って、過ごしやすい日が続いている。
夏の花を振り返り、これからの花を思う。これからは、花の少ない季節になる。
夏の花は、印象として派手だし、種類も多い。冬の花はどうだろうか、夏の花と、冬の花の違いを考えてみた。

このホームページの「樹木の写真」で、「夏咲く花の木」を見てみると、次のような特徴がある。
・春も夏も、白い花が最も多い。
・春には、黄色い花が多かったのに、代わりに夏には、赤が多くなる。
・花の咲き始めは、春、夏で、秋、冬は極端に少ない。

さて、その夏の花の樹の代表は、何だろう。

サルスベリ
百日紅と書いてサルスベリと読む。百日紅は、中国での表記だが、もちろん中国語では、サルスベリではない。
百日紅の意味は、百日咲いている紅い花、の意味だ。
確かに、サルスベリは7月から10月頃まで、つまり100日以上咲いている。
夏の日差しに負けずに、赤や白の花を、樹全体につけているので、印象は強く、夏の花の代表なのだろう。

考えてみると、盛夏(7〜8月)に華麗に咲いている樹は、そんなに多くはない。

キョウチクトウ
キョウチクトウ(夾竹桃)も夏の花で、サルスベリと同じ赤と白の花が咲く。

同じように赤と白の花があり、8月に元気に咲くのがフヨウだ。
ただし、フヨウの花は、元気なのは朝から昼過ぎまでで、夕方には拳のようになって、萎んでいる。
  
朝のフヨウの花                             夕方のフヨウの花
明るい間だけ花を開いている、フヨウのような花は、1日花と呼ばれている。
実際に、個々の花の寿命も短くて、1日か2日程度のようだ。
上の写真のように、咲いている花の後ろに、蕾が沢山用意されていて、次々に新しい花が咲くため、
樹としては、長い間花が続けて咲いているように見える。

実は、サルスベリの花も、個々の花は小さく、寿命も短いようだ。
初めの写真で分かりづらいが、ここには、沢山の花と蕾が写っている。
個々の花は、1日花で、沢山の花が次から次へと咲くので、百日紅となったらしい。
キョウチクトウが1日花という説明は見たことがないが、花の形状からしても、寿命は短いように見える。

フヨウと同じアオイ科の花には、1日花が多い。

ムクゲ
ムクゲは、花の形だけ見ていると、フヨウと間違えそうだ。同じハイビスカスの仲間だ。
同じように寿命が短く、1〜2日で個々の花は萎んでしまう。

花の樹ではではないが、夏咲く花に、カラスウリがある。秋に紅い実のなる、ツル植物だ。
非常に派手な花なのだが、普通は見ることができない。
カラスウリの花は、夜だけ咲く。それも1夜で萎んでしまう、1日(夜)花だ。

カラスウリの夢は夜ひらく

命の短い夏の花に対し、秋から冬の花は寿命の長いものが多い。
 
晩秋に咲くヤツデの花                          早春のマンサク
ヤツデもマンサクも、個々の花は、1週間前後咲いているそうだ。
夏は高温で、新陳代謝が早くいのに対し、冬は低温だから、花の寿命も自然と長くなる、
と言うのも理由の一つだろう。

別の理由としては、虫の数も影響しているのではないかと思う。
夏は、花粉を媒介する虫が多いので、1日咲いていれば充分受粉できる。
それに対し、冬は虫が少なくなるので、それだけ長い間、花を開いていないと受粉できないのだ。
その代わり、少ない虫だが独占でき、受粉効率としては、決して悪くはなさそうだ。

特定の樹の繁栄にとって、夏に咲くべきか、冬に咲くべきか。
重要な、競争戦略なのだろう。
花は、皆揃って春〜夏しか咲かない。秋〜冬は氷に閉ざされ、花無し、の自然では寂しい。
冬には冬の生きかたで、頑張って欲しい。

 

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