サクラの個性〜桜前線
2009年3月29日
2017年11月22日
今年もサクラの季節がやってきました。
今年は例年になく早い開花と言われ来ましたが、いざ開花宣言が出ると寒さがぶり返し、
開きかけた蕾も固まってしまったようです。
今年の開花のタイミングを見ていると、ソメイヨシノでさえ1本1本が咲こうか咲くまいか悩んでいるように見えます。
ソメイヨシノは、人工的に増やされたクローン(すべて同じDNAを持つ)で、本来同じ個性を持っています。
と言うか、1本1本に個性は無いということができると思います。
今年のソメイヨシノ咲き方を見ていて、1年前に行った調査を思い出しました。
昨年の春に篠原園地で個々のサクラの木の開花日を調べてみました。
サクラ3種 = 左右両端がソメイヨシノ、手前赤みがヤマザクラ、後ろ緑色がオオシマザクラ
篠原園地にはサクラの木が200本ほどあって、ソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヤマザクラの3種が混ざっています。
ソメイヨシノ66本、オオシマザクラ57本、ヤマザクラ63本、その他八重咲きサクラ10数本です。
各サクラの木の蕾が膨らみ、1シュート(枝)の花が開いた程度の状態を開花としました。
186本の木を毎日調べ、開花日を台帳に記録しました。
その結果が下のグラフです。
皆さんはどのようなことに気づかれるでしょうか。
このグラフの日付は開花日です。この期間咲いていて、4月には花は終わっていた、と言うわけではありません。
@この年も開花は早かった。
Aオオシマザクラが1番、ヤマザクラが2番、ソメイヨシノが3番目に咲き始めた。
Bオオシマザクラ、ヤマザクラは開花日が10日以上に分散してるが、ソメイヨシノは4日間ですべての木が咲き始めた。
特にソメイヨシノの開花の集中度がよく分かります。62%の木(41本)が3月26日に咲き始めました。
サクラ前線と言われ気象庁が予報を出す根拠がここにあります。
つまり個々の木に個性がなく、同じ気象条件なら一斉に開花してしまうのです。
この集中度合いが、今年ゆるいような気がします。つまり4日以上の期間に分散しているのかもしれません。
ソメイヨシノと比べオオシマザクラやヤマザクラは野生種であり、1本づつDNAが異なるので個性があります。
そこで寒さが好きかどうかなどで、10日以上の開花日のズレが生じます。
細かいことでは、ソメイヨシノの親はオオシマザクラとエドヒガンと言われています。
そのせいかオオシマザクラの開花日ピークとソメイヨシノのそれとが重なっていました。
ヤマザクラの開花日は少し遅い方にずれています。
ただし、それぞれの種は開花のスイッチの入り方が異なるので、この3つの山の相関関係が常に同じとは限りません。
サクラの花を見ながらこのグラフを想像しています。
個性の無いソメイヨシノでさえ、今年のお天気は悩まずにはいられない「変な天気」なのでしょうか。
この後はソメイヨシノについてのお話。
一代交配種であり、自家不和合性が強いため結実せず、無性繁殖(接ぎ木、挿し木)で株は作られる。
クローンであるため種としての形質が非常によく似ているとされる。
同じ気候、土地のソメイヨシノは全てがほぼ同時に開花する。
多摩森林科学園の研究者に話を伺った。
そもそもソメイヨシノは園芸品種であり、今までソメイヨシノと言われているサクラの調査ではすべてDNAは同じだったそうだ。
原木は小石川植物園にあると言われる(が、よく分からない)。
オオシマザクラとエドヒガンとの交配種、と言うのも一つの説(DNA分析では違う説もある)で、
交配すればいつもソメイヨシノと同じ形質のサクラができる訳ではない。
その意味ではソメイヨシノができたのは、長い歴史の中での偶然の傑作なのだろう。
それではソメイヨシノ同志を交配すれば、同じ形質のサクラが得られるかというとそれもうまくいかないようだ。
サクラ属は自家不和合のため、DNAが同じだと種子ができない。
ソメイヨシノが通常結実しないのはそのためで、ときどき実をつけているのは他のサクラとの間の雑種である。
育ててもソメイヨシノにはならない。