ビワ 学名 Eriobotrya japonica
別名 ヒワ
枇杷(中)
枇杷 分類 バラ科ビワ属(常緑小高木)
中国名「枇杷」の音読み。古くはヒワと呼ばれていた。実の形が、楽器の琵琶に似るためとも。 原産・分布 本州(東海地方以西)、四国、九州。中国(四川省)。
神奈川県 公園などの植採の他、逸出が多い。
用途 庭木、果樹、公園樹
西日本の石灰岩地帯に、野生のものがある。古い地層から、種子の化石が見つかっていないため、古代に中国から伝わった、と言う説など、原産地には諸説がある。
高さは10m程にもなる。主幹よりも側枝がより大きく成長する性質があるのか、1本でも大きな樹冠を作る。庭木としては暴れ木である。
改良品種が果樹として、広く植えられ名産地が多い。


川崎市
040114
樹皮は灰褐色で、細かい縦の皺がある。老木になると剥げて、斑紋ができる。
材は粘りがあり、木刀や杖を作るのに適する。


川崎市
040114
葉は枝先に集まり、互生する。葉身は広倒披針形〜狭倒卵形、基部は次第に狭くなり、無柄か、短い柄がある。縁には荒い鋸歯がある。若い枝、葉ともに綿毛が多い。
漢方で薬用とした他、民間で健胃、清涼剤として用いた(こぼれ話参照)。
★薬効★利尿、止渇、健胃、鎮咳、去痰。生薬名「枇杷葉(びわよう)」。葉の裏面の柔毛をとり除き乾燥させたもの。


大田区
(植栽)
051207
花は11〜12月に、枝先に円錐花序を出し、白い花を多数付ける。香りは強い。

大田区
(植栽)
041201
果実は花床が肥大した偽果でナシ状果。翌年5〜6月に熟し、黄褐色になる。甘くおいしい。中には黒褐色の大きな種子があり可食部は少ない感じがする。特に野生の枇杷の実は、果肉が薄い。
大きな種子のために可食部は70%弱だが、この率はバナナなどと同じだそうだ。皮を捨てるのか、中心部を捨てるのかで感じ方が異なるのも面白い。


大田区
(植栽)
040526
果実は一見では核果に見える。しかしナシ状果の証拠に種子は1〜3個で、大きくなれなかった種子(しいな?)が入っている場合もある。写真の場合は、1個の特大の種子の横に小さなしいなが付いていた。
★薬効★鎮咳。生薬名「枇杷仁(びわにん)」。種子の仁。成分は青酸配糖体のアミグダリン。
種子

神奈川県
藤沢市
160617
枇杷の種子は、その年の秋には根だけを出して越冬し、翌春に本葉を広げる。子葉は地下子葉性
写真は本葉が2枚出たところ。種子が落下して丸1年半目か。さすがに冬の寒さで葉は傷んでいる。
実生

神奈川県
二宮町
140111
こぼれ話 「枇杷葉湯(びわようとう)」
枇杷の葉は、江戸時代には民間薬としていろいろ重宝していた。葉をそのまま煎じて枇杷茶とし、暑気あたり回復や下痢止めにした。また葉を数枚風呂に入れると肌をなめらかにして、あせもに効くとされた。
京の烏丸の薬店が、枇杷葉湯として売り出したものが有名になる。材料は枇杷の葉の他に、木香桂枝甘草呉茱萸などを煎じたとされる。守貞謾稿の「巻之六生業下」にも、「枇杷葉湯売り これまた消暑の散薬なり」と紹介されている(右図)。
京、大阪、江戸で同じように売られたとされている。しかし江戸では、しばしば宣伝用に路上で往来の人にただで振る舞われたらしい。そのため、後に貞操のない女のことを枇杷葉湯と言うようになった(「広辞苑」)とか。山東京伝の洒落本「傾城買四十八手」にある「手めへの枇杷葉湯は棚に上げて〜」といった使われ方をしたようだ。なんとなくおかしい。

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